私と『なれる!SE』とエンジニア

 みなさん人生のバイブルと言えるような本はありますか?
 私の人生のバイブルは『なれる!SE』です。

 突然どうしてこんな話をしだしたかと言うと、私は現在就活で開発職を中心に就職先を探しています。と言ってもまだ2社しか受けてませんが……。
 いわゆる"エンジニア"になるために就活をしているのですが、私のエンジニア職への志望動機に欠かせない存在が『なれる!SE』です。
 少し長くなりますが就活を機に、面接対策も兼ねて私と『なれる!SE』とエンジニアについて書き記しておこうと思います。

電撃文庫
なれる!SE2週間でわかる?SE入門
著者 夏海 公司  イラストレーター Ixy
あらすじ・内容
萌えるSE残酷物語、登場!
平凡な社会人一年生、桜坂工兵は過酷な就職活動を経て、とあるシステム開発会社に就職する。そんな彼の教育係についた室見立華は、どう見ても十代にしか見えないスーパーワーカホリック娘で!? 多忙かつまったく優しくない彼女のもと、時に厳しく指導され、時に放置プレイされながら奮闘する工兵。さらには、現場を無視して仕事を取ってくる社長のおかげで、いきなり仕事を担当させられることになり!? SEの過酷な実態を萌えかつコミカルに描くスラップスティック・ストーリー登場!

openBDにちゃんとした表紙がなかった……

パソコン、インターネットとの出会い

 『なれる!SE』を読む前は私は"プログラマー"が将来の夢でした。
 パソコンに興味持ってないとそもそもあの作品読まないですよね。

 初めてパソコンを触ったのは小学生の頃だったと思います。ノートパソコンや薄型デスクトップではなくブラウン管テレビのようなディスプレイとでっかい本体のやつです。機種やOSまでは覚えていませんが、とにかくデカかったのを覚えています。
 その後はWindowsMeやWindowsXPのノートパソコンをメインで小学生の頃は触っていました。ただ実家が離島だったこともあり、小学校高学年までは確か固定回線(しかもADSL)が提供エリア外で、auのモバイル回線(SoftbankAirみたいなの?)を利用していた時期もありました。ADSLが利用できるようになってからはインターネットにのめり込み、ここでオタクの土台が形成されました。

 小学生の頃は「パソコンを使っていろいろできる」というぐらいの認識で、なんとなく将来はパソコンを使った職業に就きたいという思いがありました。実際に小学校の卒業文章で将来の夢としてどこかで聞きかじった「プログラマー」という単語を書いたのを今でも覚えています。(小学校の同窓会で読み上げた二十歳の自分への手紙的なのにも、一人だけめちゃくちゃ現実的なこと書いていてとても恥ずかしかった。)

 ちなみに実家が光回線提供エリアになったのが2,3年前です。

『なれる!SE』との出会い

 オタクの土台が形成され、読書が好きな中学生ということで必然的にライトノベルにハマってしまい『なれる!SE』と出会いました。
 元々自分で買ったわけではなく、ライトノベルを貸し借りしていた友達が持っていたのを読ませてもらったのが最初になります。その当時はSE(システムエンジニア)という言葉を知りませんでしたが、表紙からなんとなく"パソコンに関連する何か"という雰囲気を察知し、実際に読んでハマってしまいました。
その後は自分で買い集めて、新刊が出るたびに1巻から読み直すだけでは飽き足らず、新刊を読み終わった後にもう1周。教科書よりも読み込んだ本です。
カクヨムで1巻がまるまる読めるので興味のある方はこちらから読んでみるのもよいかと。

室見立華というエンジニア

 『なれる!SE』は見た目十代の先輩エンジニア室見立華から、主人公桜坂工兵がスパルタ指導され、一人前のエンジニアに成長していく素晴らしいライトノベルです。

 私は『なれる!SE』を読んでいく中で、エンジニアへの憧れ、ひいては室見立華へ憧れを持ち始めました。
 この作品に登場するキャラそれぞれに思い入れがあり、優劣つけがたいのですがやはり室見立華は別格です。
 ラノベのキャラにお前何いってんだと思うかもしれませんが、それほど私にとってこの本は大きな影響力がありました。

 ここで、室見立華というエンジニアについて色々好きなところがあるのですが、その中でも特に好きなエピソードを挙げます。

 その前に簡単なキャラの紹介をしておきます。

 ほかにも姪乃浜梢や薬院加奈子など沢山いますが今回は割愛。

休日出勤をした工兵を怒る室見立華

 つかの間の休日を満喫するも、上司である藤崎さんとばったり出会い仕事を頼まれてしまった工兵。休日出勤中の工兵とオフィスで出会った室見さんはこう言います。

あんたの上司は私でしょ。相手が藤崎さんでも社長で、私の許可なく仕事ふられたら困るのよ。次に同じことがあったらまず私に連絡して。仕事を受けるかどうか私が判断して上の人と調整する。休日に好き勝手働かせるとか、そういうこと二度とさせないから

 これまで邪険に扱っていた工兵に対して予想外の発言でしたが、ラノベ特有の"デレ"というわけではありません。OJTという任された義務を果たそうとしているだけです。
 このやり取りで工兵の脳裏に浮かんだ単語

――プロフェッショナル

 ここで初めて工兵が室見さんを一人の上司として認め尊敬し、そして畏怖します。

彼女のようにならなければ仕事をこなしていけない。

自分に――この世界は無理だ。

1巻の中盤あたりのやりとりですが、私の中で室見立華というエンジニアをかたどるには十分でした。

競合企業に侮辱されキレる室見立華

 RFP説明会参加後に昼食を摂っていた工兵と室見さん。同じ説明会に参加してた大手企業のJT&Wの社員も近くで食事を摂っていたが、工兵と室見を話のネタに談笑。もちろん話の内容は2人を馬鹿にするような内容。
 発言者に掴みかかりキレる室見さん。

何度だって言ってあげる。あんた達はプライド以外に能のない似非エンジニアよ。自分じゃ何も手を動かさないくせに、配下のベンダーやSIerに文句だけは言い続ける、寄生虫のような存在。あんた達には、あんた達だけにはエンジニアを語られたくない。私の技術を馬鹿にされたくない

 このセリフめちゃくちゃ好きなんですよね。
 室見さんのエンジニアの誇りが表現されたセリフだと思います。

伝票通しにキレる室見立華

 詳細は省きますが、RFP回答として既存のベンダーを配下につけ最低限の見積もりを算出する提案をした工兵に対してキレた室見立華のセリフ。

エンジニアが技術を外注するようになったらおしまいよ! JT&Wと同じ、トラブルが起きても追加要求が来ても馬鹿のように『協力会社に確認します』と繰り返すだけ。冗談じゃない、ベンダーは私達よ、他の誰でもない! 私達が作って私達が運用する。それ以外に技術屋の動きなんてありえない!

 先程のセリフと共通しているのですが、室見さんにとってのエンジニア像が分かるセリフになってます。
 なんか室見さんキレてばっかりだな……


 全16巻もあるので他にも好きなエピソードはたくさんあるのですが、序盤4巻までのセリフは特に『なれる!SE』を読み続けるきっかけとなっているので紹介しました。
 主に室見さんのエンジニアの誇りが現れたセリフですが、ヒロインに"かっこいい"という感情を抱いたのはこれが初めてでした。
 他にも工兵を騙してPC無料サポートとしてこき使っていた大学同期に仕事を完遂して請求書を叩きつけるシーンや、地獄の客先常駐案件で時間外労働の証拠として本番機器への作業時に日時や作業者を記すコメント文を流し込んでいたりと、技術や経験以て相手をねじ伏せるエピソードなど挙げるときりがありません。

 こうした一つ一つのエピソードが私の室見立華に対する"憧れ"を形成しています。

主人公桜坂工兵と私

 今更ですが、『なれる!SE』は主人公桜坂工兵の就職活動から物語が始まります。
 なかなか内定がもらえない工兵が見つけた求人広告。

まだ見ぬ君の可能性を求めて――

 募集要項にはYさんという文系出身の新米エンジニアの日常が綴られていました。
Yさんのようになりたい、そう思った工兵は気づくと後の物語の舞台となるスルガシステムの募集にエントリー。
 無事内定をもらった工兵だったが、もちろんYさんなんて人はいるはずもなく……(一応モデルの人とSEの体験談の寄せ集めなので全くの嘘というわけではない)
 『なれる!SE』は騙された新米エンジニア桜坂工兵の1年間を描いたお話です。


 改めて物語のスタートを振り返ると、就活中の私と工兵が重なって見えます。
 まだ就活は始まったばかりで焦りこそありませんが、やはり就活というのは大変です。

 そんな中でYさんという実際には架空の存在に憧れエンジニアを志望した工兵。
 『なれる!SE』を読み室見立華という架空(ラノベのヒロインなので)の存在に憧れ、エンジニアを志望する私。先日改めて1巻を読み直した際にこのことに気づきびっくりしました。

 私は今、工兵と同じ立場です。先日、多くの方々の力を借りて第一志望のESを仕上げ、無事面接まで漕ぎ着けました。2000字を超える御社へのラブレターの中にはもちろん『なれる!SE』や室見立華への憧れも書いています。

 そしていよいよ一次面接が迫ってきました。新卒を募集して間もない企業なので事前情報が無く、面接対策も一般的な質問に対する回答を事前に用意するぐらいしかできません。
 しかし、工兵が面接対策をたてるまでもなく「Yさんのようになりたい」そう思っただけでマニュアルと違う自分の言葉が出てきたように、私の核である『なれる!SE』や室見立華という存在が、面接中に言葉として昇華されるのでは?と思っています。(聞こえはいいがいわゆる"なるようになる"というやつ)

『なれる!SE』がきっかけの出会い

 大学進学を機に熊本に出てきた私ですが、一番大きな出会いだったのが有志のセキュリティ系勉強会である「セキュリティさくら」です。

 もともと勉強会という文化を知ったのは高校生の頃です。『なれる!SE』のイラストを描いていらっしゃるIxy先生がキャラクターデザインをしている暮井慧(プロ生ちゃん)を見かけ、「プログラミング生放送」を知りました。
 離島住みだったこともあり、実際にプロ生の勉強会に参加できたのは大学一年生のときです。そこで「セキュリティさくら」の主催者と出会ったのですが、これが大きな出会いとなりました。

 大学2年生の夏休みには台湾で開催されるHITCONに誘われ、人生で初めて海外に行きました。
 率直な話、英語のうえ内容も難しかったので技術的な面では得られたものは少なかったと思います。しかし打ち上げのパーティに参加させてもらえ、参加者の方と拙い英語で一生懸命コミュニケーションを取ったりと、大規模なカンファレンスに参加したのは私にとって大きな経験や刺激になりました。(打ち上げ会場までのバスで隣りに座った同世代の女の子とデレステで意気投合し、その後カラオケでデュエットしたのもいい思い出)

 この界隈の方々には熊本各地に連れ回していただいたり、今回の就活でもESの監修をしていただいたりと、足を向けて寝られません。就活がうまく行けばあと1年で熊本を離れることになりますが、第二の故郷として帰省ついでに顔を出したいと思っています。

『なれる!SE』と現実 

 私にとっての人生のバイブルである『なれる!SE』について思っていることを書き連ねました。室見立華への憧れや『なれる!SE』をきっかけとした様々な出会いは、私のESの志望動機を確固たるものにしてくれたと思います。
 もちろん『なれる!SE』はライトノベルであり創作上のお話です。実体験が含まれているとはいえ、現実ではお話のようにうまくいくことばかりではないことは理解しています。
 結局のところ、室見立華のようなエンジニアが現実にいるとも思っていませんし、桜坂工兵のような経験を現実の新人ができるとも思っていません。

 私の中にあるのは、室見立華というエンジニアをかたどる信念や誇りへの憧れです。室見立華との出会いで憧れの対象が変わった工兵のように、いつか私にも憧れの対象が変わるような出会いがあればいいなと密かに思っています。
 それまでは室見立華に憧れの存在として心の中で頑張ってもらいたいですね。

最後に

 『なれる!SE』最終巻の宣伝文句は「萌えるSE残酷物語、ついに本編完結!」です。
 お気づきの方もいるかと思いますが、 本編完結です。
 最終巻の巻末特別付録「立華の優しいIT説教部屋」でも

萌えるSE残酷物語、これにて一旦幕とさせていただきます。

 とありました。どうしても続編に期待せずにはいられません。

 電撃文庫は毎月10日に再来月分の刊行予定を公式サイトで発表します。いつも刊行予定を確認する時に心のどこかで『なれる!SE』の続編がひょっこり出てくるんじゃないかと期待しながら開いています。
 いつか本当に続編が出てくることを楽しみにしつつ、就職活動に励みたいと思います。


 最後にただの私的な掃き溜めに書くのもアレですが、『なれる!SE』の著者である夏海公司先生とイラストレーターのIxy先生には感謝しかありません。
 1巻あらすじにてSEという職に対し「絶対にやめとけと言いました。」と書かれていましたが、室見立華への憧れを胸にIT業界に進もうとしている読者がここにいます。
 第一志望はスルガシステムのようなSIerというわけではありませんが、人生どう転ぶか分かりません。1年後、どこかでSEとして新社会人をやっているかもしれませんし、全く違う業界に進む可能性もあります。
 それでも憧れの室見立華に恥じないエンジニアになれればいいなと思っています。